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先ほど、「狭いe」を知る方法は暗記するしかないと冷たいことを書きましたが、それは、「狭いe」と「広いe」の区別が音素的な区別だからです。もしも自動的に判断できる方法があるとすれば、2つの e は意味の違いを担うことがないと言うことになります。どの e がどちらだか事前にわからないからこそ、別の音素なのです。
日本語でもヘボン式ローマ字を使うと、ハ行は ha hi fu he ho と表記されます。u の前に h が立つ事は絶対にありません。h の後に u が立つ事も絶対にありません。つまり、これは“予想可能”だということになります。ハ行の u 段は常に子音は f です。h が絶対に立たないということは、f と h は意味を区別する機能を有していないということになります。つまり、言語学的には、f と h は、日本語においては(r と l のように)同じ1つの音素だと言う事になります。だから、fu と「フ」だけに別の子音記号を使う事は無意味だと言う事が分かります。つまり、「フ」を hu と表記した方が合理的だと言う事です。つまり、皆さんが小学校の時に習った、(タチツテトを ta ti tu te to と表記する)「訓令式ローマ字」の方が日本語のアルファベット表記としてはより完成度が高いということになるわけです(これが言語学者たちの立場です)。
ハンガリー語の場合は、ある単語で「狭いe」と「広いe」と交換するだけで意味が違ってしまうものがあります。2つは別々の音素だからです。だから、本当は2つは区別して表記した方が合理的なのです。意味を区別する機能のある独立した音素だからこそ、事前にどの e が「狭いe」なのかを知る方法はないということになります。
例えば、有名な例ですが、正書法上では mentek としか表記されず、ブダペストの人々も [mɛntɛk] としか発音しない単語は、実は4つの別々の単語で意味が違います。本当は、
mëntëk [mentek] 君たちは行く
mëntek [mentɛk] 彼らは行った
mentëk [mɛntek] 私は誰かを助ける
mentek [mɛntɛk] 彼らは免れている
これは、ブダペストの人々にとっては同音異義語に過ぎませんが、多くのハンガリー人にとっては全く別の4つの単語となります。
方言によっては、ë が ö になります。だから、こんなジョークがあります:
Hol a labda? 「ボールはどこだ?」
Mögötted! 「お前の後ろだよ」
(=Mëgëtted! 「お前が食っちまったじゃないか!」)
Dehogy öttem mög!「食ってなんかないやい!」
(=Dehogy ëttem mëg!)
また、ブダペストの人が方言をまねようとすると、e を ö に置き換えます。そこで、南の都市のセゲド (Szeged) を Szögöd のように発音します。ところが、セゲドは実は Szëged なので、実際の方言では Szöged としかなりません。この間違いはブダペストの人に2つの e が区別できないから起こります。
http://www.hum.u-tokai.ac.jp/~sitosi/
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